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朝7時頃に目が覚める。

昨日、眠りについた時間はキャンプ場の隣で週末だけ営業しているバーの騒音が止む前だったから、23時前だろうか。
途中で一度も目が覚めることもなく、ぐっすりと眠れた。
仁川とシャルル・ド・ゴールでの2度の空港泊と時差とで、フランスに着くまでに自分がどれだけ寝たかがよくわからず、昨日までのボーッとしていた身体が元の状態に整った気がした。

いつも通りの簡単な朝食を済ます。
この日は昨年秋にトライしたけど、天候や時間の都合で登りきれずプロジェクトとなっていたクラックボルダーの「Lueur d'Espoir」をトライしようと考えていた。
課題のあるエリアまではバスと徒歩でアプローチするつもりだったけど、肝心のナビゴにアプリからチャージができず(クレカ会社がフランスでは受信ができない日本の電話番号のSMSに送るワンタイムパスワードのせい)、また、現金も持ってなくてバスに乗る手段が無く、どうやってエリアまでアプローチするか悩んだ挙句、キャンプ場の隣のサイトのクライマー(外にクラッシュパッドを置いているからすぐにクライマーだとわかった)に声をかけて、エリア近くの駐車場まで乗せて行ってもらえないかお願いすることにした。
恐る恐る声を掛けたが、返事は気持ち良いほどの快諾だった。
声を掛けた相手の名前はアンドレアス。
スウェーデンのストックホルムからひとりで来ているクライマーだ。
6週間、リモートで仕事をしながらフォンテーヌブローに滞在しているらしい。
彼のフォルクスワーゲンのミニバンで目標課題のあるRocher des Demoisellesまで乗せていってもらい、車を降りる。
お互いに「have a nice day」と言い合って別れた。
ひとり、フォンテーヌブローの森を目標課題に向かって歩く。

前回訪れた秋とは違い、淡い緑色をした新芽の輝く春のフォンテーヌブローも美しく、たとえ今日登れなかったとしても、この先まだ約2週間の滞在期間があるのだからなんとかなるだろうという気持ちもあって心が軽く、美しい森の中でのハイキングを楽しんだ。
しばらく歩くと見覚えのある景色になり、「たしかこの辺りに…」と周辺を探索したら目的の岩とはすぐに再会ができた。

その岩は地上に出ている部分はわずか3mほどで、あとは地下駐車場に向かうかのようになだらかな地面のスロープを降りて行き、その行き止まりから上を見上げると頭上には4〜5mはあるルーフクラックが出口までスッパリと続く。

そのクラック以外には手も足も使えそうなホールドは存在せず、ジャミングができないと登ることのできないクラックボルダーとして申し分のない美しい岩だ。

昨年の秋は全体のムーブを作るも繋げる事は叶わず、雨続きの天気により敗退を余儀なくされてしまった。
また、ジャミングする指のテーピングの厚みも薄かったため、ムーブ作りの間に皮が摩耗して血が出るほど皮膚がえぐれてしまっていた。
そんな昨秋の苦い経験から、今回の旅行では少しでも荷物を減らしたい中で少し多すぎると思えるほどのテーピングを用意していた。
天気予報では午後から気温が上がる予報だし、夕方はルーフ奥から出口を見上げると逆光になってしまう事を思い出し、焦る気持ちもありながら入念に昨年に作ったムーブの復習をした。
クラックに指を差し込み、その指を強烈にひねってロックさせるポイントを確認する。
核心は手のボリュームがない私には辛いオフフィンガー(シンハンド?)。
その先は逆に指の細さゆえに決まりすぎて指を残置してしまいそうなタイトなクラック。
痛みさえ我慢できれば抜けないほどの決まり具合だけど、ひねる動作は必須なので骨が軋む。
前回の自分のトライ動画では上手く映っていなかった足位置のせいで一時的にムーブ迷子になるも、ここで焦ってムーブを作るための連続トライを試みて疲れてしまわないように気持ちを落ち着かせた。
ほどなくして一連のムーブが再現でき、完登を意識したトライのためにマット位置やカメラ位置を調整して、レイヤードしていた長袖シャツを脱いで気合を入れた。
その日のファーストトライの緊張感はあったが、まだ先の日程の天気予報も良いことが救いとなり、気持ちは軽かった。
前回、けっこうハードに感じていた離陸からの初手取りも、フレッシュな事もあってか問題なく成功し、ハンドジャム&フットジャムを決めて左手を寄せていく。

前半はハンドジャムの効きは良いけど、150度はありそうな傾斜に全力で耐えながら次のムーブを起こしていく。
手も足もヒネってクラックに喰い込ませながらガマンのムーブを繋げていき、指を残置してしまいそうなフィンガークラックへの核心の一手もなんとか決まった。

この先は難しいムーブはないけども、ハンドジャムしながらのマントル気味なムーブでスラブ面に出るまでは油断はできない。
このトライで決めきりたかったから、うめき声を上げながら身体を岩の上に引き上げた。
岩のてっぺんまで登りきった時は、思わず岩の上で歓喜の声を上げた。
・・・なんて事はなく、安堵してしばらく座り込んだけだったと思う。
日本から背負ってきた重荷を下ろせたその後は「さて、この後の時間はどうしよう?」と考えた。
この日の繋げトライ一回目で登れたから時間はたっぷりと残っているし、せっかくキャンプ場から徒歩ではアクセスし難いエリアまで送ってもらったから、他の課題も触ってみようと考えて、前回フォントで出会った地元クライマーに「ファースト7C」として人気だという課題が同じエリアにあることを思い出して行ってみることにした。
その課題は「Chaman」という課題で、大きすぎず小さすぎずの丁度良いサイズで、どっかぶりからダイナミックに手を進めて行き、ホールディングも面白く、ついでにグレードの割には登りやすい(大事)という人気になるもの納得の岩だった。
その証拠に岩の前には入れ替わり立ち替わりクライマーグループが訪れていた。

好きな(得意とは言ってない)被り系という事もあり一日で登れそうだったけど、核心を超えたところで手か足か覚えてないけどスリップしてしまって登りきれなかった。
悔しいけど目標だった課題は登れてるのであんまり悔しくない。という微妙な気持ちが残ったけど、また次回の楽しみとしてここらでキャンプ場に帰ることにした。
キャンプ場までは地図アプリを頼りに約2時間半歩いた。
第一日曜日だったからフォンテーヌブロー宮殿も無料で見学できる日だったけど、クラッシュパッドがあったから今回は入らず。
ドット絵ナポレオン
キャンプ場に着いた頃にはだいぶ日も傾いていた。奥に見えている車が今朝、エリアまで送ってくれたアンドレアスの車。
「どうだった?」と聞かれて「送ってくれたおかげで送れた(Sendできた)よ」というジョークをかます英語力はないので、「おかげで登れたよ!ありがとう!」というような事を言って、握手をした。































エリアで一番目立つ大きなボルダー。































































被り具合がエグい。




